【句形・解説】五十歩百歩(『孟子』より)
梁の恵王が孟子にたずねた。「私は日ごろ、国を強く豊かにするために心を尽くしている。隣国はこのような政治を行っていないのに人口が減らず、我が国の人口は増えない。国力に差がつかないのはどうしてであろうか。」孟子は次のように答えた。① 孟子対曰、...
原文
梁の恵王が孟子にたずねた。「私は日ごろ、国を強く豊かにするために心を尽くしている。隣国はこのような政治を行っていないのに人口が減らず、我が国の人口は増えない。国力に差がつかないのはどうしてであろうか。」孟子は次のように答えた。
①孟子対曰、②「王好戦。請以戦喩。③塡然鼓之、兵刃既接。④棄甲曳兵而走。⑤或百歩而後止、或五十歩而後止。⑥以五十歩笑百歩、則何如。」
⑦曰、「不可。⑧直不百歩耳。⑨是亦走也。」
書き下し文
①孟子対へて曰はく、②「王戦ひを好む。請ふ戦ひを以つて喩へん。③塡然として之を鼓し、兵刃既に接す。④甲を棄て兵を曳きて走る。⑤或いは百歩にして後に止まり、或いは五十歩にして後に止まる。⑥五十歩を以つて百歩を笑はば、則ち何如。」と。
⑦曰はく、「不可なり。⑧直だ百歩ならざるのみ。⑨是も亦走るなり。」と。
現代語訳
①孟子が答えて言うことには、②「王は戦いを好みます。どうか戦争で例えさせてください。③〔戦場で〕進軍の太鼓をドンドンと打ち鳴らし、〔両軍の〕武器が交わりました。④〔すると兵士が〕よろいを捨てて武器を引きずって逃げました。⑤ある者は百歩逃げたあとでとどまり、ある者は五十歩逃げたあとでとどまりました。⑥〔五十歩逃げた者が〕五十歩〔だけ〕逃げたことで百歩逃げた者を〔臆病だと〕笑ったらとしたら、どうでしょうか。」と。
⑦〔王が〕言うことには、「〔それは〕よくない。⑧ただ百歩逃げなかったというだけだ。⑨これ(=五十歩逃げた者)もまた逃げたのである。」と。