置き字:書き下し文に書かない
助字:ひらがなで書く
白文 書き下し文 現代語訳
① 虎求百獣而食之[1]、得狐。
下:虎百獣を求めて之を食らひ、狐を得たり。
訳:虎が獣たちを探し求めては食べ、〔あるとき〕狐をつかまえた。
② 狐曰、「子無敢食我[2]也。
下:狐曰はく、「子敢へて我を食らふこと無かれ。
訳:狐が言うことには、「あなたは決して私を食べてはいけません。
下:敢へて…無かれ
訳:決して…してはいけない
③ 天帝使我長百獣[3]。
下:天帝我をして百獣に長たらしむ。
訳:天帝が私を獣たちの王にならせたのです。
下:AをしてB(せ)しむ
訳:AにBさせる
④ 今子食我、是逆天帝[4]命也。
下:今子我を食らはば、是れ天帝の命に逆らふなり。
訳:もしいまあなたが私を食べるならば、それは天帝の命令に背くことになります。
⑤ 子以我為不信[5]、吾為子先行。
下:子我を以つて信ならずと為さば、吾子の為に先行せん。
訳:あなたが私のことを本当でないと思うならば、私はあなたのために〔あなたの〕前に立って歩きましょう。
下:Aを以つてBと為す
訳:AをBと思う
⑥ 子随我後観。
下:子我が後に随ひて観よ。
訳:あなたは私のうしろについてきて、〔その様子を〕見なさい。
⑦ 百獣之見我、而敢不走乎[6]。」
下:百獣の我を見て、敢へて走げざらんや。」と。
訳:あらゆる獣が私を見て、どうして逃げないことがありましょうか、いや、必ず逃げます。」と。
下:敢へて…ざらんや
訳:どうして…ないことがあろうか、いや必ず…する
置き字:書き下し文に書かない
助字:ひらがなで書く
白文 書き下し文 現代語訳
⑧ 虎以為然[7]。
下:虎以つて然りと為す。
訳:虎は〔狐の言うことを〕もっともだと思った。
下:Aと為す
訳:Aと思う
⑨ 故遂与之[8]行。
下:故に遂に之と行く。
訳:そこでそのままこれ(=狐)と一緒に歩いた。
⑩ 獣見之[9]皆走。
下:獣之を見て皆走ぐ。
訳:獣たちはこれ(=狐といっしょに歩いている虎)を見てみな逃げた。
⑪ 虎不知獣畏己而走也。
下:虎獣の己を畏れて走ぐるを知らざるなり。
訳:虎は獣たちが自分をおそれて逃げたことに気がつかなかった。
⑫ 以為畏狐[10]也。
下:以つて狐を畏ると為すなり。
訳:〔虎は獣が〕狐をおそれているのだと思った。
下:Aと為す
訳:Aと思う
力を持たない弱い者が、権力をもつ者の威勢をかさにきて威張り散らすこと。