【句形・解説】蛇足(『戦国策』より)

戦国策_蛇足 高校古典
【原文・書き下し文・現代語訳】蛇足(『戦国策』より)
原文 戦国時代、楚の国の将軍昭陽は、魏の国を攻めて勝利し、さらに斉の国を攻めようとした。そのとき、斉の国の王の意を受けた遊説家の陳軫が、斉の国への攻撃をやめさせるために、次のようなたとえ話を用いて将軍昭陽を説得した。 ①楚有祠者。②賜其舎人...

戦国策_蛇足_01

置き字:書き下し文に書かない
助字:ひらがなで書く
白文 書き下し文 現代語訳


① 楚有祠者。
下:楚に祠る者有り。
訳:楚の国に祭礼をつかさどる人がいた。


② 賜其舎人[1]卮酒。
下:其の舎人に卮酒を賜ふ。
訳:〔あるとき〕その(=自分の)使用人たちに大杯についだ酒を与えた。

[1] 舎人=使用人

③ 舎人相謂曰、
下:舎人相謂ひて曰はく、
訳:使用人たちが互いに言うことには、


④ 「数人飲之[2]足、一人飲之[3]有余。
下:「数人にて之を飲まば足らず、一人にて之を飲まば余り有り。
訳:「数人でこれ(=酒)を飲めば足りず、一人でこれ(=酒)を飲めば余ってしまう。

[2] =卮酒(酒)
[3] =卮酒(酒)

⑤ [4]画地為蛇、先成者飲酒。」
下:請ふ地に画きて蛇を為り、先づ成る者酒を飲まん。」と。
訳:地面に蛇を描いて、最初にできあがった者が酒を飲むことにしよう。」と。

[4] 請…【願望の句形】
下:ふ…(せ)ん
訳:…しようではないか。

⑥ 一人蛇先成。
下:一人の蛇先づ成る。
訳:一人が蛇〔の絵〕を最初に描きあげた。


⑦ 引酒且[5]飲之[6]
下:酒を引きて且に之を飲まんとす。
訳:〔その者は〕酒を引き寄せて今にもこれ(=酒)を飲もうとした。

[5] 且…【再読文字】
下:まさに…(せ)んとす
訳:今にも…しようとする
[6] =酒

⑧ [7]左手持卮、右手画蛇曰、
下:乃ち左手にて卮を持ち、右手にて蛇を画きて曰はく、
訳:そこで左手で大杯を持ち、右手で蛇を描きながら言うことには、

[7] 【重要語】
読:乃ち(すなわ-ち)
訳:そこで

⑨ 「吾能[8]為之足。」
下:「吾能く之が足を為る。」と。
訳:「私はこれ(=蛇)の足を描くことができる。」と。

[8] 能…【重要語法】
下:く…
訳:…することができる

戦国策_蛇足_02

置き字:書き下し文に書かない
助字:ひらがなで書く
白文 書き下し文 現代語訳


⑩ [9]成、一人蛇成。
下:未だ成ざるに、一人の蛇成る。
訳:〔その者の蛇の足が〕まだ完成しないうちに、〔別の〕一人の蛇〔の絵〕が出来あがった。

[9] 未…【再読文字】
下:いまだ…ず
訳:まだ…ない

⑪ 奪其[10]卮曰、「蛇固[11]無足。
下:其の卮を奪ひて曰はく、「蛇固より足無し。
訳:〔その男が〕その(=先に蛇を完成させた者の)大杯を奪って言うことには、「蛇にはもともと足がない。

[10] =先に蛇を完成させた者の
[11] 【重要語】
読:固より(もと-より)
訳:もともと

⑫ [12][13][14]為之[15]足。」
下:子安くんぞ能く之が足を為らんや。」と。
訳:あなたはどうしてこれ(=蛇)の足を描くことができようか、いや、描けるはずがない。」と。

[12] 【重要語】
読:子(し)
訳:あなた
[13] 安…【反語の句形】
下:いずくんぞ…んや
訳:どうして…しようか、いや、…しない
[14] 能…【重要語法】
下:く…
訳:…することができる
[15] =蛇

⑬ [16]飲其酒。
下:遂に其の酒を飲む。
訳:〔その人は〕そのままその酒を飲んだ。

[16] 【重要語】
読:遂に(つい-に)
訳:そのまま/こうして

⑭ 為蛇足者、終[17]亡其酒。
下:蛇の足を為る者、終に其の酒を亡へり。
訳:蛇の足を描いた者は、とうとうその酒を飲みそこねた。

[17] 【重要語】
読:終に(つい-に)
訳:結局/とうとう
★最初に蛇を描き上げた人が、酒を手に入れられなかったのはなぜ?
蛇には足などないのに足を描き足してしまい、蛇の絵として完成させられなかったから。
★蛇に足を描いた者はだれのたとえ?
楚の国の将軍昭陽。魏の国に勝利したことに満足せず、斉の国を攻めようとした。
★「蛇足」のたとえ話で陳軫が主張したことは?
人間は勢いづいているときに、する必要のないこと、余計なことをしてしまうということ。
★故事成語「蛇足」はどういう意味?
つけくわえる必要のないもの。無用の長物。

 

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