【品詞分解・解説】東下り(『伊勢物語』より)

伊勢物語_東下り 高校古典

【原文・現代語訳】東下り(『伊勢物語』より)
(1)昔、男ありけり。…… 原文 ①昔、男ありけり。その男、身をえうなきものに思ひなして、京にはあらじ、東の方に住むべき国求めにとて行きけり。②もとより友とする人、ひとりふたりして行きけり。③道知れる人もなくて、惑ひ行きけり。④三河の国八橋...

(2)行き行きて、駿河の国に至りぬ。……

① 行き行きて、駿河の国に至りぬ。
さらに進んで行って、駿河の国に着いた。

行き行き=[動]カ四「行き行く」用
=[接助]単純な接続
駿河の国=[名]
=[格助]動作の帰着点
至り=[動]ラ四「至る」用
=[助動]完了「ぬ」止

② 宇津の山に着いて、自分が入ろうとする道は、たいそう暗く細い上に、蔦・楓は茂り、なんとなく心細く、思いがけない〔つらい〕目に遭うことだと思っているときに、修行者が〔一行に〕会った。
宇津の山に至りて、わが入らむとする道は、いと暗う細きに、蔦・楓は茂り、もの心細く、すずろなるめを見ることと思ふに、修行者会ひたり。

宇津の山=[名]
=[格助]動作の帰着点
至り=[動]ラ四「至る」用
=[接助]単純な接続
わが=[連語]
入ら=[動]ラ四「入る」未
=[助動]意志「む」止
=[格助]引用
する=[動]サ変「す」体
=[名]
=[係助]主題の提示
いと=[副]
暗う=[形]ク「暗し」用・ウ音便
細き=[形]ク「細し」体
=[格助]添加
=[名]
=[名]
=[係助]主題の提示
茂り=[動]ラ四「茂る」用
もの心細く=[形]ク「もの心細し」用
すずろなる=[形動]ナリ「すずろなり」体
=[名]
=[格助]動作の対象
見る=[動]マ上一「見る」体
こと=[名]
=[格助]引用
思ふ=[動]ハ四「思ふ」体
=[接助]単純な接続
修行者=[名]
会ひ=[動]ハ四「会ふ」用
たり=[助動]完了「たり」止

③ 「かかる道は、いかでかいまする。」と言ふを見れば、見し人なりけり。
〔修行者が〕「こんな道を、どうして行かれるのですか。」と言うのを見ると、見知った人であった。

かかる=[連体]
=[名]
=[係助]主題の提示
いかで=[副]
=[係助]疑問(結びの語:いまする)
いまする=[動]サ変「います」体
=[格助]引用
言ふ=[動]ハ四「言ふ」体
=[格助]動作の対象
見れ=[動]マ上一「見る」已
=[接助]偶然条件
=[動]マ上一「見」用
=[助動]過去「き」体
=[名]
なり=[助動]断定「なり」用
けり=[助動]詠嘆「けり」止

④ 京に、その人の御もとにとて、文書きてつく。
都に〔いる〕、〔愛する〕その人の御もとにと思って、〔男は〕手紙を書いてことづけた。

=[名]
=[格助]動作の帰着点
その=[連語]
=[名]
=[格助]連体修飾格
御もと=[名]
=[格助]動作の帰着点
とて=[格助]引用
=[名]
書き=[動]カ四「書く」用
=[接助]単純な接続
つく=[動]カ下二「つく」止

⑤ 駿河なる宇津の山べのうつつにも夢にも人にあはぬなりけり
駿河にある宇津の山のように、現実でも夢でも〔愛する〕人に会えないのであることよ

駿河=[名]
なる=[助動]存在「なり」体
宇津=[名]
=[格助]連体修飾格
山べ=[名]
=[格助]比喩
うつつ=[名]
=[格助]場所
=[係助]並列
=[名]
=[格助]場所
=[係助]並列
=[名]
=[格助]動作の対象
あは=[動]ハ四「あふ」未
=[助動]打消「ず」体
なり=[助動]断定「なり」用
けり=[助動]詠嘆「けり」止

⑥ 富士の山を見れば、五月のつごもりに、雪いと白う降れり。
〔一行が〕富士山を見ると、五月の下旬なのに、雪が降っている。

富士=[名]
=[格助]連体修飾格
=[名]
=[格助]動作の対象
見れ=[動]マ上一「見る」已
=[接助]偶然条件
五月=[名]
=[格助]連体修飾格
つごもり=[名]
=[格助]時
=[名]
いと=[副]
白う=[形]ク「白し」用・ウ音便
降れ=[動]ラ四「降る」已
=[助動]存続「り」止

⑦ 時知らぬ山は富士の嶺いつとてか鹿の子まだらに雪の降るらむ
時節をわきまえない山は富士の山だ。〔今を〕いつと思って鹿の子模様のまだらのように雪が降っているのだろうか

=[名]
知ら=[動]ラ四「知る」未
=[助動]打消「ず」体
=[名]
=[係助]主題の提示
富士=[名]
=[格助]連体修飾格
=[名]
いつ=[名]
とて=[格助]引用
=[係助]疑問(結びの語:らむ)
鹿の子まだら=[名]
=[格助]状態・状況
=[名]
=[格助]主格
降る=[動]ラ四「降る」止
らむ=[助動]現在推量「らむ」体

⑧ その山は、ここにたとへば、比叡の山を二十ばかり重ね上げたらむほどして、なりは塩尻のやうになむありける。
その山(=富士山)は、ここ(=都)でたとえると、比叡山を二重ほど積み上げたようなほど〔の高さ〕で、形は塩尻のようであった。

その=[連語]
=[名]
=[係助]主題の提示
ここ=[名]
=[格助]場所
たとへ=[動]ハ下二「たとふ」未
=[接助]偶然条件
比叡=[名]
=[格助]連体修飾格
=[名]
=[格助]動作の対象
二十=[名]
ばかり=[副助]程度
重ね上げ=[動]ハ下二「重ね上ぐ」用
たら=[助動]完了「たり」未
=[助動]婉曲「む」体
ほど=[名]
して=[格助]手段・方法
なり=[名]
=[係助]主題の提示
塩尻=[名]
=[格助]連体修飾格
やうに=[助動]比況「やうなり」用
なむ=[係助]強意(結びの語:ける)
あり=[動]ラ変「あり」用
ける=[助動]過去「けり」体

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